No.002猫と生きる人

ミルクボランティアとは?3〜4時間おきの授乳。15〜16匹を預かったMさんの話

膝の上で片手に子猫をのせ、もう一方の手に持った哺乳瓶でミルクを与えているところ
Mさん提供:生まれて間もない子猫への授乳
3〜4時間おきの授乳。排泄の手助け。生まれたばかりの子猫を、離乳するまで育てる「ミルクボランティア」。Mさんはこれまで、15〜16匹の子猫を預かってきた。新しい家族のもとへ送り出した子も、そのままMさんの家族になった子もいる。一方で、育てるなかで亡くなった子もいた。小さな命を預かる大変さと、育てて送り出すまでの日々を聞いた。

この記事では

お話を聞いた人

Mさん

預かった子猫
短期間の子を含めて15〜16匹
お住まい
愛知県

「自分にもできるかも」から始まった

預かりボランティアを始めたきっかけを教えてください。

始めたのは2020年の4月ごろです。少し記憶が曖昧なところもあるので、正確でなかったら申し訳ないのですが。

幼い頃から猫を飼いたいと思っていましたが、なかなか叶いませんでした。大人になり、夫の後押しもあって、猫を迎えることになります。初めて家に来たのは、ペットショップにいた子でした。

そこから猫に夢中になってしまって。調べていくうちに保護猫の活動を知り、自分にもできることがあるのではないかと思って保護猫カフェでのボランティアを始めました。

そこから、預かりボランティアを始めた経緯を教えてください。

もともとは掃除をしたり、猫を病院に連れて行ったり、預かりさんのお宅に届けたりするのが私の役割だったんです。

その中で、生まれてすぐの子が来たのでミルクをお願いできないか、と頼まれることがあって。それがきっかけで預かるようになりました。

タオルを敷いた段ボールの中で、身を寄せ合って眠る4匹の子猫
Mさん提供:保護されて間もない頃の子猫たち

3〜4時間おきの授乳。ミルクボランティアの日々

預かりボランティアは、具体的にどんなことをするのでしょうか。

預かりボランティアには、大きく分けて2種類あると思います。ひとつは、ある程度大きい猫で人に慣れていない子を家に迎えて、慣れるまで育てて里親に出すもの。

もうひとつが、私がしていたほうです。育児放棄された子や、母猫に育ててもらえなくなった子にミルクを与えます。いわゆる「ミルクボランティア」です。最初は3〜4時間おきの授乳が必要で、施設の人手だけではとても回りません。

また生まれたばかりの子は自分で排泄もできないので、それを促すのも役目です。離乳食まで進めて、自分でごはんを食べられるようになったら施設にお返しします。そこまでの過程を受け持ちます。

3〜4時間おきとなると、生活はどう変わりましたか。

当時は私が日中も家にいられて、夫も在宅勤務だったので、二人で分担していました。日中仕事で家を空ける方だと、難しいかもしれません。

ボランティアとはいえ、3〜4時間おきの授乳を責任を持って続けられることが大切です。ただ、施設によっては、昼間は施設で世話をして、夜だけ預かる形もあるそうです。施設と協力しながら続けている方もいると聞きました。

先住猫がいる場合は、どうされていましたか。

私の場合は、感染症などの可能性も考えて先住猫とは部屋を分けていました。

先住猫がいる場合は、預かる前に団体へ隔離方法などを確認しておくといいと思います。

深夜の通院と、医療費・フード代の負担

預かっていて、大変だったことを教えてください。

たくさんありますが、いちばんは体調のことです。赤ちゃん猫はまだ体が弱いですし、あまり良くない状態で保護されていることもあります。

容体が急変すれば、深夜でも病院へ連れて行きます。時間も体力も必要でした。

なかでも、預かった子が亡くなってしまったときは、辛かったです。

医療費は、預かる側の負担になるのでしょうか。

私が関わっていた団体では、医療費もフード代も自己負担でした。団体や自治体、預かりの条件によって異なるので、これから預かりを始める方は、事前に確認しておいたほうがいいと思います。

小さな子猫と、病気のこと助かった命と、助けられなかった命

印象に残っている子はいますか。

いま家にいる、らん丸です。ミルクボランティアとして、兄弟と一緒にミルクから育てた子です。2匹とも猫風邪にかかっていましたが、兄弟の子は、残念ながら命をつなぐことができませんでした。らん丸も決して安心できる状態ではなく、2、3日に一度は病院へ通っていました。

らん丸たちは猫風邪で呼吸が苦しく、ミルクを飲むこともままなりませんでした。まだ身体の小さい時期だったこともあり、獣医師からも厳しい状態だと伝えられていました。

それでも通院を続けながらミルクを与え、らん丸は少しずつ元気を取り戻してくれました。

いまのらん丸ちゃんは、どうですか。

それが、まったく問題ないんです。(家にいる)3匹のなかでいちばん丈夫です。らん丸を見ていると、子猫のときに猫風邪をひいたからといって、その後もずっと弱いとは限らないのだと思います。

子猫の頃

ケージの中でタオルの上に座り、こちらを見上げる白と黒の子猫
Mさん提供:ミルクから育てた頃のらん丸ちゃん

いま

人の腕にもたれて目を細める、白と茶のぶち柄の猫
Mさん提供:いまのらん丸ちゃん

預かっていた子が、家族になることも

らん丸ちゃんは、そのまま家族に迎えられたんですね。

夫が、絶対にこの子はと言って。手がかかった分だけかわいくて、離れられなくなりました。ボランティアをしていた団体は、そうした引き取りを歓迎してくれるところで、全く問題ないと言っていただけました。

キャットタワーの上下の段でくつろぐ、長毛の猫と三毛の猫
Mさん提供:先住のジアちゃんとラテちゃん

育てた子を、送り出す日

里親さんが決まるまでの流れを教えてください。

私の役目は、ミルクから離乳して、自分でごはんを食べられるようになるまでです。そこまで育ったら保護猫カフェにお返しして、その後はカフェにお任せします。子猫は比較的、早く里親さんが決まることが多かったです。

送り出すときは、どんな気持ちでしたか。

もちろん寂しさはあります。でも、それ以上にうれしい気持ちもありました。無事に里親さんが決まり、どんな方に迎えられたのかをスタッフさんから聞くと、「頑張ってよかった」と思えます。

ここまで育ってくれた。これから幸せになってほしい。そう思うことで、自分の寂しさとも折り合いをつけていました。

一匹を送り出したら、また次の子を預かる。新しい命を救えることも、気持ちを切り替える支えになっていたと思います。

送り出した後の様子を、知ることはできますか。

私の場合、その後の様子を知る機会はあまりありませんでした。ただ、里親さんが写真を送ってくださったり、SNSをされていたりして、元気に暮らしている姿を見られることもありました。

預けた後は、もう自分の猫ではないと思うようにしていました。もちろん、その後の様子を知れたらうれしいです。でも、送り出した先で幸せに暮らしていることを願って、そこから先は里親さんに託す。そんなふうに考えていました。

できなかったことが、できるようになる成長を見守る喜び

ミルクボランティアの魅力を教えてください。

生きるか死ぬかという状態で、必死に授乳して、病院へ通って。もちろん大変なのですが、その分、少しずつ成長していく姿を見ると嬉しいです。

体調が安定して、ミルクを飲めるようになる。離乳食を食べ、トイレを覚え、鳴くようになる。

生まれたばかりの頃は本当に小さく、そこから毛が伸び、歩けるようになり、少しずつ猫らしくなっていきます。

その変化をすぐそばで見守れることが、ミルクボランティアの魅力だと思います。

ミルクボランティアを考えている人へ

預かりに興味はあるけれど不安、という方に伝えるとしたら。

預かりは、とても大変です。医療費のこと、数時間おきの授乳で眠れない日が続くこと、先住猫がいる場合はきちんと隔離できるかどうか。まずは、自分の生活の中で責任を持って続けられるかを、よく考えてから始めてほしいと思います。

途中で「やはり無理でした」となってしまうことが、いちばん避けたいことです。一定期間、命を預かる覚悟があるか、自分自身に問いかけることは大切だと思います。

その一方で、生まれて間もない子を育て、少しずつ成長していく姿を見守れるのは、ミルクボランティアだからこそできる経験です。小さな命をつなぐことに関われる。大変さも含めて、かけがえのない経験になると思います。

最後に、Mさんは猫と関わるうえで大切にしていることについて、こんなふうに話してくれました。

言葉が通じなくても、できるだけ気持ちを汲み取ろうとする。そういう努力が必要だと思っています。
Mさん

この記事を書いた人

石佛晴奈

ネコリンク編集長/合同会社Enphoria代表

地域猫との出会いをきっかけに保護猫活動を知り、現在は自身も保護猫と暮らす。猫との暮らしを支えるスマホアプリ「ネコカルテ」「ネコゴハン」と、保護猫と人をつなぐメディア「ネコリンク」を運営。ネコリンクでは、自ら取材・執筆も行っている。

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