
お話を聞いた人
Fさん
- お住まい
- 沖縄県
- 年代・職業
- 30代・経営者
- 一緒に暮らす猫
- あめちゃん
出会いは突然に。大雨の日に見つけた動く紙袋
あめちゃんと出会った日のことを教えてください。
僕が20歳の大学生だったときです。大雨のなか、コンビニから帰ると、家の前に大きめの紙袋が置かれていて、その袋が動いていました。何だろうと思って中を覗くと、子猫が3匹いたんです。ただ残念ながら2匹は亡くなっていました。僕が家へ連れて帰ったのが、あめです。
見つけてから、どうされたのですか。
すぐに家へ連れて帰りました。何をすればいいのか全く分からず、スマートフォンで調べながら手探りで世話をしました。すると、少しずつ元気に鳴くようになってくれました。
その後、病院で検査を受けると、大きな異常はなく、元気だと言われました。手に乗るほど小さく、生後2〜3か月くらいだったと思います。
迎えることに、迷いはありませんでしたか。
病院で「この子をどうしますか」と聞かれたとき、あめはもう僕にめちゃくちゃ懐いていたんです。実家では犬を飼っていましたが、猫と暮らすのは初めてでした。それでも、「飼います」と答えました。
当時は大学生で、家賃を自分で払いながらの生活には余裕がありませんでした。大変な時期でしたが、そこからあめとの暮らしが始まりました。
初めての猫との暮らしは、いかがでしたか。
あめは、あっという間に家に馴染みました。気に入った場所に小さなかごを置き、タオルを敷いて窓際に置くと、そこで寝たり、外を眺めたりしていました。最初から、自分の家のような空気でした。
ただ、小さい頃は何でも噛みちぎる子でした。よく着ていたTシャツをばらばらにされたり、こたつ布団を全部噛みちぎられたり。大学から帰ると、箱ティッシュの中身が部屋中に散らばっていたこともあります。当時は大変でしたが、今では可愛い思い出です。

名前の由来は、雨の日を好きになれるように
「あめ」という名前には、どんな由来があるのでしょうか。
普段はリラックスしているあめでしたが、雨が降ると窓際に近づかなくなったり、雷や強い雨音が聞こえると僕の近くに来たりしました。大雨の日にたぶん捨てられた、そのときの怖さが残っているのかもしれないと思いました。なので、いつか雨の日を好きになれるように、あめと名付けました。
大阪から沖縄へ。引っ越しを重ねて
大阪から沖縄へ移るとき、あめちゃんはどうやって移動したのでしょうか。
僕が23歳の頃、あめが3歳くらいのときに、飛行機で一緒に沖縄へ移りました。ペットは原則、貨物として預けると聞いて心配でしたが、航空会社から、ペットが入る区画の空調や音への配慮について説明を受けて、それならと預けました。
沖縄での暮らしでは、あめちゃんに変化はありましたか。
沖縄に来てからの方が、活発に、でも大体はのんびりと生きているように見えます。新しい家に入っても、隠れて出てこなくなることは一度もありませんでした。
沖縄県内でも4回ほど引っ越しましたが、そのたびに、すぐ好きな場所を見つけます。「ここを自分の場所にしよう」というような感じで。あめは生まれた頃から、ずっと僕と一緒に動いてきました。

変わっていく暮らしと、変わらないあめちゃん
Fさんは今、奥様・お子様と暮らしていらっしゃいますよね。ご家族が増えてから、あめちゃんとの暮らしに変化はありましたか。
あめは、うちの子どもにも懐いています。子どもが「にゃんにゃん」と言いながら僕の部屋に入ってきて、あめと遊んでいることもよくあります。
威嚇するときの「シャー」という声を、僕はあめから一度も聞いたことがありません。怒っているところも見たことがないんです。穏やかな子だと思います。

何もない毎日が、一番の思い出
あめちゃんとの、特に印象に残っている思い出を教えてください。
強く印象に残っている出来事がないことが、僕にとっての思い出なのかもしれません。毎日が穏やかなんです。あめは基本的に僕の部屋で過ごしていて、仕事中も近くでずっと寝ています。
僕が座って仕事をしていることも、あめから見れば、何もせずに座っているように見えるのでしょうね。あめは、僕と何もしていない時間が、かなり好きなのだと思います。
あめちゃんの気持ちを、強く感じた出来事はありますか。
朝に家を出て、夜に帰る日が1週間ほど続いたことがありました。そのとき、初めてあめが寂しそうにしていたんです。帰ると僕のそばから離れず、トイレに立とうとするだけでも鳴いていました。
猫は自由で、情が薄いように言われることもありますが、全然そんなことはないと思いました。あめからすれば、当時は僕が唯一の家族だったでしょうから、寂しかったのかもしれません。

突然現れる、猫の体調不良
これまでに、大きく体調を崩したことはありましたか。
一度、あめの便が出ていないことに気づいたことがあります。トイレには座るのに、出ていない。でも、普段どおりはしゃいだり、寝転がったりしていました。それだけを見ていたら、体調が悪いとは分からなかったと思います。
病院でレントゲンを撮ると、腸閉塞を起こしかけていると説明され、手術と経過観察のために入院しました。
体調の変化には、普段どんなところから気づくのでしょうか。
毎日一緒にいると、少しの変化に気づきます。便の色や鳴き声、水の減り方。あめの場合、つらそうな様子はなく、いつもどおりでした。だから、トイレの様子を見ることは大事だと思っています。
あめちゃんが入院したときは、どんなお気持ちでしたか。
僕はめったに泣かないのですが、あめが入院したときは泣きました。治療や入院、薬に4万8,000円ほどかかりましたが、金額は全く気になりませんでした。4万円でも40万円でも、たぶん同じだったと思います。
あめちゃんのネコゴハン
手術をきっかけに、食事も替えたそうですね。
あめは胃腸があまり強くないので、手術をしたときに獣医師からロイヤルカナンの「消化器サポート(可溶性繊維)」を勧められました。今はそれを続けています。食事を替えてからは、同じことは起きていません。

「可愛い」の先まで、引き受ける覚悟
猫を迎えようと考えている人へ、伝えたいことはありますか。
保護猫を迎えるのは、始めるだけなら簡単です。「可哀想だから助けたい」という善意からでも始められます。でも、大変なのは、そこからです。
お金もかかるし、友達と気軽に2泊3日の旅行へ行くことも難しくなります。家の中は間違いなく毛だらけ、傷だらけになる。何かに集中しているときに限って机へ乗って、コップを倒すようなこともあります。それくらいは、気にしていられないほど起きます(笑)。
そういうことがあると分かった上で、迎える覚悟は必要です。途中でまた手放すことになれば、猫を傷つけることになります。だからこそ、その先まで考えて欲しいと思います。
でも、とにかく可愛いです。
あめちゃんがFさんにもたらしたもの
あめちゃんと暮らして、ご自身に変化を感じることはありますか。
僕はもともと、自由にやりたくて、自分のことしか考えていなかったタイプでした。でも、あめを迎えてからは、そうではなくなりました。
前の話にもあったように、猫と暮らせば、お金もかかるし、気軽に旅行へ行くことも難しくなります。あめと暮らすなかで、僕も自分の都合だけで生きることはなくなりました。
周りからは「ずっと難しい顔をしていたのに、表情が変わった」と、よく言われました。あめが僕にもたらしたものは、大きかったと思います。
編集後記
猫を迎える前と同じ生活は、できなくなる
「保護猫を迎えることは、善意から始められる。でも、飼い続けるには覚悟がいる」というFさんの言葉が、特に印象に残りました。
もしかしたら、「犬より猫の方がお留守番ができるから、飼うのは楽」という印象をお持ちの方もいるかもしれません。けれど、猫の性格は一匹ずつ違いますし、急に病気になることもあります。
猫を迎えるということは、迎える前と全く同じ生活はできなくなるということ。その変化まで引き受ける覚悟が必要なのだと感じます。
この記事を書いた人
石佛晴奈
ネコリンク編集長/合同会社Enphoria代表
地域猫との出会いをきっかけに保護猫活動を知り、現在は自身も保護猫と暮らす。猫との暮らしを支えるスマホアプリ「ネコカルテ」「ネコゴハン」と、保護猫と人をつなぐメディア「ネコリンク」を運営。ネコリンクでは、自ら取材・執筆も行っている。
運営者について※この記事は、2026年9月にFさんへ行った取材をもとに作成し、ご本人の確認を経て公開しています。



