No.005里親インタビュー

大雨の日に拾った子猫と暮らして12年。Fさんに聞く、あめちゃんとの日々

薄いグレーの毛布にくるまり、カメラを見つめるあめちゃん
Fさん提供:毛布にくるまるあめちゃん
大雨の日、家の前で動く紙袋の中にいた子猫。Fさんは、その子を家へ連れ帰りました。猫との暮らしは初めて。大阪から沖縄への引っ越しや入院を経た、あめちゃんとの12年間を聞きました。

お話を聞いた人

Fさん

お住まい
沖縄県
年代・職業
30代・経営者
一緒に暮らす猫
あめちゃん

出会いは突然に。大雨の日に見つけた動く紙袋

あめちゃんと出会った日のことを教えてください。

僕が20歳の大学生だったときです。大雨のなか、コンビニから帰ると、家の前に大きめの紙袋が置かれていて、その袋が動いていました。何だろうと思って中を覗くと、子猫が3匹いたんです。ただ残念ながら2匹は亡くなっていました。僕が家へ連れて帰ったのが、あめです。

見つけてから、どうされたのですか。

すぐに家へ連れて帰りました。何をすればいいのか全く分からず、スマートフォンで調べながら手探りで世話をしました。すると、少しずつ元気に鳴くようになってくれました。

その後、病院で検査を受けると、大きな異常はなく、元気だと言われました。手に乗るほど小さく、生後2〜3か月くらいだったと思います。

迎えることに、迷いはありませんでしたか。

病院で「この子をどうしますか」と聞かれたとき、あめはもう僕にめちゃくちゃ懐いていたんです。実家では犬を飼っていましたが、猫と暮らすのは初めてでした。それでも、「飼います」と答えました。

当時は大学生で、家賃を自分で払いながらの生活には余裕がありませんでした。大変な時期でしたが、そこからあめとの暮らしが始まりました。

初めての猫との暮らしは、いかがでしたか。

あめは、あっという間に家に馴染みました。気に入った場所に小さなかごを置き、タオルを敷いて窓際に置くと、そこで寝たり、外を眺めたりしていました。最初から、自分の家のような空気でした。

ただ、小さい頃は何でも噛みちぎる子でした。よく着ていたTシャツをばらばらにされたり、こたつ布団を全部噛みちぎられたり。大学から帰ると、箱ティッシュの中身が部屋中に散らばっていたこともあります。当時は大変でしたが、今では可愛い思い出です。

ハンモックで横になるFさんの腕に前足を添えるあめちゃん
Fさん提供:ハンモックでFさんとくつろぐあめちゃん

名前の由来は、雨の日を好きになれるように

「あめ」という名前には、どんな由来があるのでしょうか。

普段はリラックスしているあめでしたが、雨が降ると窓際に近づかなくなったり、雷や強い雨音が聞こえると僕の近くに来たりしました。大雨の日にたぶん捨てられた、そのときの怖さが残っているのかもしれないと思いました。なので、いつか雨の日を好きになれるように、あめと名付けました。

大阪から沖縄へ。引っ越しを重ねて

大阪から沖縄へ移るとき、あめちゃんはどうやって移動したのでしょうか。

僕が23歳の頃、あめが3歳くらいのときに、飛行機で一緒に沖縄へ移りました。ペットは原則、貨物として預けると聞いて心配でしたが、航空会社から、ペットが入る区画の空調や音への配慮について説明を受けて、それならと預けました。

沖縄での暮らしでは、あめちゃんに変化はありましたか。

沖縄に来てからの方が、活発に、でも大体はのんびりと生きているように見えます。新しい家に入っても、隠れて出てこなくなることは一度もありませんでした。

沖縄県内でも4回ほど引っ越しましたが、そのたびに、すぐ好きな場所を見つけます。「ここを自分の場所にしよう」というような感じで。あめは生まれた頃から、ずっと僕と一緒に動いてきました。

丸いベッドの中で体を丸め、顔を隠すように眠るあめちゃん
Fさん提供:お気に入りのベッドで眠るあめちゃん

変わっていく暮らしと、変わらないあめちゃん

Fさんは今、奥様・お子様と暮らしていらっしゃいますよね。ご家族が増えてから、あめちゃんとの暮らしに変化はありましたか。

あめは、うちの子どもにも懐いています。子どもが「にゃんにゃん」と言いながら僕の部屋に入ってきて、あめと遊んでいることもよくあります。

威嚇するときの「シャー」という声を、僕はあめから一度も聞いたことがありません。怒っているところも見たことがないんです。穏やかな子だと思います。

青い画面のテレビを背に、首輪をつけて正面を向くあめちゃん
Fさん提供:穏やかな表情でカメラを見つめるあめちゃん

何もない毎日が、一番の思い出

あめちゃんとの、特に印象に残っている思い出を教えてください。

強く印象に残っている出来事がないことが、僕にとっての思い出なのかもしれません。毎日が穏やかなんです。あめは基本的に僕の部屋で過ごしていて、仕事中も近くでずっと寝ています。

僕が座って仕事をしていることも、あめから見れば、何もせずに座っているように見えるのでしょうね。あめは、僕と何もしていない時間が、かなり好きなのだと思います。

あめちゃんの気持ちを、強く感じた出来事はありますか。

朝に家を出て、夜に帰る日が1週間ほど続いたことがありました。そのとき、初めてあめが寂しそうにしていたんです。帰ると僕のそばから離れず、トイレに立とうとするだけでも鳴いていました。

猫は自由で、情が薄いように言われることもありますが、全然そんなことはないと思いました。あめからすれば、当時は僕が唯一の家族だったでしょうから、寂しかったのかもしれません。

ソファの背もたれに前足をかけ、目を細めてくつろぐあめちゃん
Fさん提供:ソファでくつろぐあめちゃん

突然現れる、猫の体調不良

これまでに、大きく体調を崩したことはありましたか。

一度、あめの便が出ていないことに気づいたことがあります。トイレには座るのに、出ていない。でも、普段どおりはしゃいだり、寝転がったりしていました。それだけを見ていたら、体調が悪いとは分からなかったと思います。

病院でレントゲンを撮ると、腸閉塞を起こしかけていると説明され、手術と経過観察のために入院しました。

体調の変化には、普段どんなところから気づくのでしょうか。

毎日一緒にいると、少しの変化に気づきます。便の色や鳴き声、水の減り方。あめの場合、つらそうな様子はなく、いつもどおりでした。だから、トイレの様子を見ることは大事だと思っています。

あめちゃんが入院したときは、どんなお気持ちでしたか。

僕はめったに泣かないのですが、あめが入院したときは泣きました。治療や入院、薬に4万8,000円ほどかかりましたが、金額は全く気になりませんでした。4万円でも40万円でも、たぶん同じだったと思います。

あめちゃんのネコゴハン

手術をきっかけに、食事も替えたそうですね。

あめは胃腸があまり強くないので、手術をしたときに獣医師からロイヤルカナンの「消化器サポート(可溶性繊維)」を勧められました。今はそれを続けています。食事を替えてからは、同じことは起きていません。

キャットタワーに置かれたロイヤルカナンの消化器サポート(可溶性繊維)の袋
Fさん提供:現在食べている「ロイヤルカナン 消化器サポート(可溶性繊維)」

「可愛い」の先まで、引き受ける覚悟

猫を迎えようと考えている人へ、伝えたいことはありますか。

保護猫を迎えるのは、始めるだけなら簡単です。「可哀想だから助けたい」という善意からでも始められます。でも、大変なのは、そこからです。

お金もかかるし、友達と気軽に2泊3日の旅行へ行くことも難しくなります。家の中は間違いなく毛だらけ、傷だらけになる。何かに集中しているときに限って机へ乗って、コップを倒すようなこともあります。それくらいは、気にしていられないほど起きます(笑)。

そういうことがあると分かった上で、迎える覚悟は必要です。途中でまた手放すことになれば、猫を傷つけることになります。だからこそ、その先まで考えて欲しいと思います。

でも、とにかく可愛いです。

あめちゃんがFさんにもたらしたもの

あめちゃんと暮らして、ご自身に変化を感じることはありますか。

僕はもともと、自由にやりたくて、自分のことしか考えていなかったタイプでした。でも、あめを迎えてからは、そうではなくなりました。

前の話にもあったように、猫と暮らせば、お金もかかるし、気軽に旅行へ行くことも難しくなります。あめと暮らすなかで、僕も自分の都合だけで生きることはなくなりました。

周りからは「ずっと難しい顔をしていたのに、表情が変わった」と、よく言われました。あめが僕にもたらしたものは、大きかったと思います。

編集後記

猫を迎える前と同じ生活は、できなくなる

「保護猫を迎えることは、善意から始められる。でも、飼い続けるには覚悟がいる」というFさんの言葉が、特に印象に残りました。

もしかしたら、「犬より猫の方がお留守番ができるから、飼うのは楽」という印象をお持ちの方もいるかもしれません。けれど、猫の性格は一匹ずつ違いますし、急に病気になることもあります。

猫を迎えるということは、迎える前と全く同じ生活はできなくなるということ。その変化まで引き受ける覚悟が必要なのだと感じます。

この記事を書いた人

石佛晴奈

ネコリンク編集長/合同会社Enphoria代表

地域猫との出会いをきっかけに保護猫活動を知り、現在は自身も保護猫と暮らす。猫との暮らしを支えるスマホアプリ「ネコカルテ」「ネコゴハン」と、保護猫と人をつなぐメディア「ネコリンク」を運営。ネコリンクでは、自ら取材・執筆も行っている。

運営者について

※この記事は、2026年9月にFさんへ行った取材をもとに作成し、ご本人の確認を経て公開しています。

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